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イヌイットの海の獣の脂極北のアザラシの肉と脂の食

カナダ極北やグリーンランドに暮らすイヌイットの人々は、アザラシやシロイルカ、クジラなど海の獣の肉と脂を、主に生で、分け合って食べてきました。1930年代の記録に残る食事の割合と、店の食べものが加わった今の暮らしを紹介します。

カナダ極北・グリーンランド・アラスカなどの極北地域15〜16世紀ごろに今に近い暮らしの形(記録は20世紀から)主な食べもの脂肪今も続いている

概要

イヌイットは、カナダの極北地域などに暮らし、イヌイット語を母語とする人々です。「イヌイット」は、イヌイット語で「人びと」「人間たち」を意味します。極北には、アラスカのイヌピアットやユピート、グリーンランドの人々など、地域ごとに自分たちの呼び名を持つ人々が暮らしています。

食べものの中心は、狩りや漁でとる海の獣と魚、陸の獣です。カナダ・ハドソン湾沿岸の村では、アザラシ・セイウチ・シロイルカなどの海の獣、カリブー(野生のトナカイ)、ガンやカモ、ホッキョクイワナなどの魚、ベリー類や貝などが食べられています。食べ方は生が中心で、干す・煮る・発酵させるほかは、料理と呼ぶものはほとんどないと紹介されています。脂を多くとり、食物繊維はほとんどとらない食事です。

歴史

今のイヌイットの祖先は、10世紀ごろにアラスカに現れた捕鯨の文化(チューレ文化)を担った人々とされます。その後の寒冷化で鯨が少なくなると、地域ごとにさまざまな獲物をとるようになりました。犬ぞりで移動し、雪の家に住み、生の肉を食べる暮らしの形は、15〜16世紀以降に整ったものと説明されています。

20世紀には、研究者が食べたものの量を記録しました。1908年にグリーンランドを訪れたクローグ夫妻は、19世紀半ばの資料をもとに、西グリーンランドの人々の1日の食事を約2,559kcal、そのうちたんぱく質44%、脂肪47%、炭水化物8%と見積もりました。

1960年代、カナダ政府は季節ごとに移り住んでいたイヌイットを村に定住させました。学校や英語の教育が進み、暮らしは大きく変わりました。

よくある1食の風景

1936年から1937年にかけて、医師ホイゴールらの研究チームが、東グリーンランドのアンマサリク地区(今のタシーラク周辺)で人々と暮らし、食べたものを家庭用のはかりで量りました。1937年1月1日、この地区には756人が73軒の家に住んでいました。1軒あたり平均10人ほどです。冬は石と芝土で作った家、夏はテントで暮らしていました。

料理は、狩りでとった獲物が中心で、いちばん大切な食べものはフィヨルドのアザラシでした。外から買った食べものは、オート麦・米・ライ麦の粉・砂糖だけで、エネルギーの約1割でした。買ったものを除くと、エネルギーの割合はたんぱく質41%、脂肪49%、炭水化物10%と計算されています。

量は、1日あたりの中央値で、男性が約3,881kcal、女性が約2,910kcalでした。研究者が食べものを量ったのは家の中で、1軒に平均10人ほどが暮らす冬の家が、ふだんの食事の場でした。アザラシの脂は食べるだけでなく、灯りの燃料にも使われました。狩りに出た先で食べる分は量りきれなかったと、研究者自身が書き残しています。

今の暮らしの中で

ケベック州北部の村アクリヴィクでは、今はプレハブの家に住み、冷凍庫に多くの生肉をたくわえています。子どもや孫が祖父母の家を訪れ、一緒に昼食や夕食をとることが多いそうです。アザラシやカリブーの肉、ホッキョクイワナを切り身にして、アザラシの油につけて食べます。アザラシの油は、日本の醤油のような感覚で使われていると紹介されています。

とった肉は売らずに、親族や村の人と分け合います。2001年の調査では、イヌイットの家の96%が、とった食べものをほかの人と分け合っていました。一方で、パンやパスタなど南から運ばれる食べものも年々増えています。狩りに使うスノーモービルの燃料には現金がいるという悩みもあります。海の氷が減って狩りが難しくなったことや、遠くから運ばれた汚染物質が海の獣の体にたまっていることも、課題とされています。

よくある誤解・豆知識

「エスキモー」という呼び名は使われなくなってきました。 カナダでは1970年代から、本人たちの言葉である「イヌイット」が使われています。

シロイルカやクジラの皮と脂の「マタック」は大好物です。 噛んでもなかなか噛みきれない、弾力のある食べものです。アラスカでは煮て食べることも多いそうです。

雪の家の暮らしは、それほど古いものではありません。 15〜16世紀ごろに形づくられたもので、日本でいえば鎌倉時代より後にできた文化だと説明されています。

参考文献

最終更新:2026-10-17

このページは、世界の食の習わしを、歴史と文化として紹介するものです。健康や栄養、食事の取り方についての助言ではありません。食事の内容は、年齢や体の状態に合わせて、医師や管理栄養士に相談してください。

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