チューニョアンデスの凍らせて干すいも
チューニョは、アンデス高地で、じゃがいもを冬の夜の寒さで凍らせ、昼の日差しで干して作る保存食です。インカの時代から記録が残り、今もティティカカ湖のまわりで作られています。その作り方と、高地のふだんの食事を紹介します。
ペルー南部・ボリビアのアンデス高地(ティティカカ湖のまわり)スペイン人の到来より前から〜主な食べもの炭水化物今も続いている
概要
チューニョは、アンデスの高地で作られる、じゃがいもの保存食です。収穫したじゃがいもを、冬の夜の厳しい寒さで凍らせ、昼の強い日差しで解かして乾かします。仕上がったものは軽く、長くたくわえておけます。新しいじゃがいもからは、重さで約6分の1のトゥンタができ、少なくとも5年は保存できるとされます。
主な産地は、ペルー南部からボリビアにかけてのティティカカ湖のまわりで、標高は3,800mを超えます。この寒さの中で育つじゃがいもには苦い品種が多く、そうした品種はチューニョ作りに向いています。黒いチューニョと、水にさらして白く仕上げる白いチューニョがあり、白いものはアイマラ語で「トゥンタ」、また「モラヤ」とも呼ばれます。
歴史
チューニョは、スペイン人が来る前から作られてきました。インカの国では、チューニョを国の倉にたくわえ、飢饉の心配がある土地へ送ったり、兵士の食料にしたりしたと紹介されています。2026年には、ペルー南部の海岸に近いインカの遺跡タンボ・ビエホからもチューニョが見つかり、インカの遺跡から見つかった2例目と報じられました。
1553年に出版されたシエサ・デ・レオンの『ペルー年代記(Crónica del Perú)』第1部は、ティティカカ湖のまわりのコリャオ地方について、こう書いています。人々の主な食べものはじゃがいもで、それを干して次の収穫まで保存する。干したものはチューニョと呼ばれ、とても大切にされている。畑に水を引く水路がないので、雨が足りないとき、このたくわえがなければ飢えに苦しむだろう。さらに、銀の鉱山があったポトシにチューニョを運んで売るだけで、多くのスペイン人が財産を作って本国に帰った、とも記しています。
よくある1食の風景
アンデス高地の人々は、炭水化物の多くを、生のじゃがいもやチューニョ、大麦、トウモロコシ、キヌアなどからとってきました。チューニョは、ゆでたじゃがいもに比べて、たんぱく質や亜鉛は少なく、カルシウムは多いと報告されています。
チューニョ作りは、5月の収穫のあと、6〜8月の冬の乾季に行われます。黒いチューニョは、わらの上に広げたじゃがいもに夜のあいだ川の水をかけて凍らせ、素足で踏んで皮をむき、15日ほど干して作ります。トゥンタは、凍らせたじゃがいもを3週間ほど川の水にひたしてから干します。夜通しの作業のため、作り手の家族が、ビニールのテントで寝泊まりすることもあります。
1985年、ペルー南部の高地の町ヌニョアで、26の家の127人の食事が調べられました。その記録から、収穫前の季節の1食を描いてみます。料理は、30分ほどゆでたチューニョを、肉と一緒に、またはソースやスープに入れたものです。チーズと合わせる料理もあります。収穫前は、たくわえておいた昔ながらの食べものや、よそから買った食べものの割合が大きくなる時期でした。量は、1日のエネルギーにして約1,150kcalで、収穫後の約1,519kcalより少なくなっていました。食べる場所は家で、食事は家族の中で分けられます。食べものが少ない収穫前には、子どもの分を先に確保していたことも報告されています。
今の暮らしの中で
今もチューニョとトゥンタは、家族の食べものであると同時に、売って現金を得る品でもあります。ペルーのトゥンタは、プーノ州のイラベなどで多く作られ、仲買人を通してボリビアに運ばれるものもあります。
国際ポテトセンター(CIP)は、作り手と一緒に、昔ながらの素足で踏むやり方に代えて、網に入れてひねる、シートの上で干す、といった方法を広める取り組みをしてきました。首都リマの食の祭りに出品して、新しい買い手を探す試みも紹介されています。
よくある誤解・豆知識
「フリーズドライ」と同じ考え方です。 凍らせて水分を抜くしくみは、今の工場の凍結乾燥とよく似ています。違うのは、高地の夜の寒さと昼の日差しという、自然の力だけで作る点です。
白と黒で作り方が違います。 黒いチューニョは凍らせて踏んで干したもの、白いトゥンタは、そのあと長く水にさらして苦みを抜いたものです。
19世紀にも同じ光景が記録されています。 1864年にシエサの本を英訳したマーカムは、6〜7月の寒い季節に、川のほとりに浅い池を作ってじゃがいもを入れ、霜でチューニョにすると注に書いています。
参考文献
- Pedro de Cieza de León『The Travels of Pedro de Cieza de León, A.D. 1532-50』Clements R. Markham 訳、Hakluyt Society、1864年(第99章とマーカムの注)Project Gutenberg https://www.gutenberg.org/ebooks/48770
- International Potato Center(CIP)「Finding new markets for a pre-Columbian potato product in Peru」 https://cipotato.org/blog/new-markets-pre-columbian-potato/
- Burgos G, de Haan S, Salas E, Bonierbale M「Protein, iron, zinc and calcium concentrations of potatoes following traditional processing as “chuño”」Journal of Food Composition and Analysis 22(6): 617–619、2009年 https://cipotato.org/?p=70912
- La República「Chuño y tunta, alimentos del altiplano peruano producidos a 15 grados bajo cero」2020年7月6日 https://larepublica.pe/sociedad/2020/07/06/en-puno-la-helada-es-indispensable-para-la-supervivencia-lrsd
- Leonard WR, Thomas RB「Biosocial Responses to Seasonal Food Stress in Highland Peru」Human Biology 61(1)、1989年 https://digitalcommons.wayne.edu/humbiol/vol61/iss1/8
- Leonard WR, Thomas RB「Changing dietary patterns in the Peruvian Andes」Ecology of Food and Nutrition 21(4): 245–263、1988年 https://agris.fao.org/search/en/records/65de9b030f3e94b9e5cfcff4
- Live Science「500-year-old freeze-dried potato snacks discovered in Inca storage room in Peru」2026年 https://www.livescience.com/archaeology/500-year-old-freeze-dried-potato-snacks-discovered-in-inca-storage-room-in-peru
最終更新:2026-10-17
このページは、世界の食の習わしを、歴史と文化として紹介するものです。健康や栄養、食事の取り方についての助言ではありません。食事の内容は、年齢や体の状態に合わせて、医師や管理栄養士に相談してください。