世界じょうしき図鑑眠る

居眠りいねむりその場にいながら眠る日本の習わし

座ったまま、その場にいながら眠る「居眠り」。日本では会議や授業、議会の場でも見られ、海外の研究者は「inemuri」として調べてきました。言葉の歴史と、どんな場面でどう受け止められてきたかを紹介します。

日本15世紀の辞書に語が見える〜昼寝・うたた寝今も続いている

概要

居眠りは、座ったり腰かけたりしたまま眠ることです。日本では、会議や授業、議会、乗りものの中など、ほかの人がいる場で、うとうとする姿がよく見られます。

この習わしを研究してきた日本学者のブリギッテ・シテーガは、居眠りを「その場にいながら眠ること」と説明し、英語の論文でも「inemuri」という日本語のまま紹介しています。ふつうの「寝る」とは違い、その場にいて、その場の一員であり続けることが、この言葉の大切なところです。

歴史

「居眠る」という言葉は古くからあります。国語辞典によれば、15世紀後半の字書『和玉篇』や、1603〜04年にイエズス会が作った『日葡辞書』に、「いねぶる」として載っています。「いねぶり」「いねむり」は同じ意味の言葉です。

江戸時代の滑稽本『東海道中膝栗毛』(1802〜09年)には、「いねぶれる人々のひざのしたをさぐり」という一節があります。うとうとしている人が何人もいる場面が、物語の中に描かれています。「居眠り」の名詞の形も、古い用例が辞典に挙げられています。

議会での居眠りは、週刊誌の話題にもなりました。シテーガは、国会議員の居眠りを取り上げた週刊誌『週刊宝石』の連載記事を手がかりに、2003年に論文を発表しています。

眠りの風景

たとえば議場では、席についた議員が目を閉じていても、体はその場にあり、議事は目の前で進んでいます。シテーガは、このような居眠りを、公の場で、人から見える形で仕事をしているときのうたた寝として論じました。会議室や教室でも、同じように、その場に座ったまま眠る姿が見られます。

シテーガの論文は、二つのことを指摘しています。一つは、仕事への打ちこみが、効率や集中よりも、かけた時間と手間で測られがちなことです。そのため居眠りは、仕事に打ちこんで夜の眠りを削った疲れの表れと受け取られることがあり、打ちこみをそっと示すものにさえなりうるといいます。

もう一つは、その場の進行をこわさないかぎり、居眠りは「本筋から少し離れた関わり方」として受け入れられている、という点です。ただし、どこまで許されるかは立場の上下によって変わり、だれが許すかを決めるのも力関係だとしています。シテーガは、授業中の居眠りについても、日本の時間と勤勉の考え方とあわせて論じています。

今の暮らしの中で

議会の居眠りには、厳しい目も向けられます。千葉県の市川市議会は、2022年9月の定例会から、議場のカメラを議員の席にも向け、その様子をインターネットで配信し始めました。テレビ番組で一部の議員の居眠りが報じられ、市民から100件以上の苦情が寄せられたことがきっかけでした。茨城県議会や千葉県議会でも、規律を求める文書が送られたり、議事に集中する申し合わせがされたりしました。

日本の人の睡眠時間は、総務省の2021年の調べで、10歳以上の平均が1日7時間54分でした。2016年の調べより14分長くなっています。

よくある誤解・豆知識

「いねむり」の「い」は「居る」です。 「その場に居ながら眠る」ことを表す言葉で、寝床で横になって眠ることとは区別されます。

海外でも「inemuri」の名で知られています。 英語の新聞や雑誌、研究書で、日本の人前のうたた寝を表す言葉として紹介されてきました。

研究は今の日本だけではありません。 シテーガは、今の日本に加えて、平安時代の眠りと時間についても研究しています。

すべての居眠りが受け入れられるわけではありません。 シテーガの研究は、立場や場面によって許される度合いが違うことを示しています。車の運転のように、人の安全にかかわる場面での居眠りは、事故につながる危険な行為として扱われます。

参考文献

最終更新:2026-10-17

このページは、世界の眠りの習わしを、歴史と文化として紹介するものです。睡眠や健康についての助言ではありません。眠りのことで困ったときは医師に相談してください。赤ちゃんの寝かせ方は、自治体や小児科の案内に従ってください。