布団敷いて、たたむ日本の寝具
夜に敷き、朝にたたんで押入れにしまう日本の布団。綿の入った布団が多くの家に広まったのは、大正の終わりから昭和にかけてといわれます。むしろや衾から、夜着、敷布団と掛布団へと移り変わった寝具の歴史を紹介します。
日本江戸時代(元禄のころから木綿の寝具が広まり始める)〜寝具今も続いている
概要
布団は、布の袋に綿などを詰めた日本の寝具です。床に敷く「敷布団」と、上に掛ける「掛布団」があります。夜、畳の上に敷いて眠り、朝にはたたんで押入れにしまうのが、昔ながらの使い方です。
今の形の布団が多くの家に行きわたったのは、思われているほど昔ではありません。百科事典は、綿の入った布団が本当に広まったのは、大正の終わりから昭和に入ってからだと説明しています。
歴史
むしろと衾
古い時代、多くの人は、板の間や土間にこもやむしろを敷いて眠っていました。上には、昼に着ていた着物を掛けることが多かったといいます。この寝方は、所によっては20世紀の初めごろまで続きました。
平安時代の貴族は、畳の上に「茵(しとね)」を敷き、「衾(ふすま)」と呼ぶ掛け物をかけて休みました。畳は、昼は座る場所に、夜は寝床に使われました。
木綿の布団へ
室町時代に木綿が伝わると、寝具は大きく変わります。敷くものは「蒲団」、掛けるものは「夜着(よぎ)」と呼ばれるようになりました。ただ、このころの木綿の寝具はたいへんな貴重品でした。
江戸時代に木綿の栽培と織物が盛んになると、元禄(1688〜1704年)のころから、中身も布も木綿の寝具が広まり始めます。大きな着物の形をした夜着は、桃山時代に現れたとされます。江戸時代の中ごろからは、関西で四角い掛布団「大蒲団」が作られ、夜着は少しずつ姿を消していきました。関東から東北では、小さめの夜着「搔巻(かいまき)」が近年まで使われました。
多くの家に広まるまで
とはいえ、綿の布団を使えたのは、ごく一部の人でした。多くの農村では、むしろや藁、もみ殻などが寝具に使われました。町でも、和紙で作った「紙衾」を使う人が多くいました。布団を買うためにお金を積み立てる「蒲団頼母子講」も、各地で行われました。
国際基督教大学の湯浅八郎記念館の展示の案内も、木綿の夜具は庶民には高価で、多くは嫁入り支度など特別なときにあつらえる品だったと伝えています。
眠りの風景
夜になると、押入れから布団を出して、畳の部屋に敷きます。朝には布団をたたみ、押入れに戻します。これを「布団を上げる」といいます。昼の間は布団をしまっておくので、同じ部屋を寝る場所にも、昼の暮らしの場所にも使えます。
押入れは、この布団をしまうための場所です。奥行きはおよそ90cm、幅はおよそ1.8mで、中は上下2段に分かれています。押入れが広まったのは江戸時代の中ごろからで、厚い布団が広まったことと結びついていると考えられています。関西には、動かせる「布団戸棚」を部屋の隅に置く家もありました。
晴れた日には、布団を日に当てて干します。長く使って綿がふくらまなくなると、綿を「打ち直し」て使い続けました。江戸時代には、使用料をとって布団や衣服、道具を貸す「損料屋」という店もありました。
今の暮らしの中で
明治時代になると、一部の人々の間でベッドが使われ始めました。日本でベッドが最初に使われたのは、病院や軍隊だったとされます。大正から昭和にかけて、敷布や毛布も少しずつ一般の家に広がりました。
第二次世界大戦のあとは、化学繊維の綿や布が使われるようになりました。家で縫うことの多かった布団は、工場で作られるものに変わります。敷布団の下にマットレスを敷くことも広まりました。
布団の大きさは、1974年に日本工業規格(JIS)で示されました。1983年の確認で、ふつうの布団の長さは195cmと210cmの2種類とされています。
よくある誤解・豆知識
「ふとん」は、もとは座るための敷物の名でした。 「ふ(蒲)」と「とん(団)」は、中国から伝わった読み方です。座禅のときに座る、蒲(がま)の葉で編んだ丸い敷物を指しました。「布」は「蒲」に当てた字です。
英語の「futon」は、少し違うものを指します。 英語の辞書メリアム・ウェブスターは、futon を「床に敷いたり、枠にのせてベッドやソファー、いすとして使ったりする、ふつうは綿を詰めたマットレス」と説明しています。英語での最初の用例は1876年とされます。
関東と関西で仕立て方が違いました。 敷布団は、関東では「三布(みの)」の引返し仕立て、関西では「四布(よの)」の鏡仕立てが使われました。今は全国で、三布の引返し仕立てが多く使われています。
「万年床」という言葉もあります。 いつも敷いたまま、片づけない寝床のことです。辞典は、1918年の久米正雄の小説の用例を挙げています。
参考文献
- コトバンク「寝具」(日本大百科全書・改訂新版 世界大百科事典 ほか) https://kotobank.jp/word/寝具
- コトバンク「ふとん」(日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典) https://kotobank.jp/word/ふとん
- コトバンク「布団」(デジタル大辞泉) https://kotobank.jp/word/布団
- コトバンク「押入れ」(日本大百科全書・改訂新版 世界大百科事典) https://kotobank.jp/word/押入れ
- コトバンク「損料屋」(精選版 日本国語大辞典・世界大百科事典) https://kotobank.jp/word/損料屋
- コトバンク「万年床」(精選版 日本国語大辞典) https://kotobank.jp/word/万年床
- 国際基督教大学博物館 湯浅八郎記念館「特別展『夜具――夜のしつらい』」案内、2019年 https://subsites.icu.ac.jp/yuasa_museum/docs/press_release/114_2019a_yagu_pressrelease.pdf
- Merriam-Webster「futon」 https://www.merriam-webster.com/dictionary/futon
最終更新:2026-10-19
このページは、世界の眠りの習わしを、歴史と文化として紹介するものです。睡眠や健康についての助言ではありません。眠りのことで困ったときは医師に相談してください。赤ちゃんの寝かせ方は、自治体や小児科の案内に従ってください。