世界じょうしき図鑑

スビャートキの占い冬の祝祭の夜の占い

クリスマスから神現祭までの冬の祝祭期間「スビャートキ」に、ロシアの娘たちが未来の結婚相手を占った民間の習わし。フェルトの長靴を門の外に投げる占いなどが知られています。

発祥:ロシア古くから(19世紀の文学にも登場)偶然のしるしを読む解説のみ

概要

スビャートキ(Святки)は、ロシアなど東スラヴの人々が祝ってきた冬の祝祭期間です。クリスマスから神現祭(主の洗礼祭)までのおよそ12日間を指します。この時期には、若い娘たちが未来の結婚相手を占う「スビャートキの占い」が盛んに行われました。

この占いは、教会の正式な行事ではなく、民間で受けつがれてきた習わしです。今では本気の占いというより、冬の夜の伝統的な遊びや、文化として楽しまれることが多くなっています。

スビャートキとはどんな時期か

ロシア正教会は、昔からのユリウス暦で祝日を数えています。そのため、クリスマスは今の暦で1月7日、神現祭は1月19日にあたります。民間では、この間をスビャートキと呼ぶのが一般的です。教会での数え方では、神現祭の前日より前に終わるなど、少し期間が異なります。

ロシア北部では、前半を「聖なる夕べ」、後半を「恐ろしい夕べ」と呼び分ける地域がありました。この時期は、ふだん見えない世界との境があいまいになり、亡くなった人の魂や悪い霊がこの世に近づくと信じられていました。そのため、未来をのぞくのにふさわしい時だと考えられたのです。

人々は仮装して家々を回ったり、歌を歌って祝ったりしました。一方で、占いは教会からたびたび批判されてきました。7世紀末のトゥルロ公会議でも、占い師に頼ることや、仮装などの異教的な祭りの習わしが禁じられています。

さまざまな占い方

スビャートキの占いには、地域によって多くの種類があります。よく知られているものを紹介します。

一つ目は、靴を投げる占いです。娘がフェルトの長靴(ワーレンキ)などを門の外へ投げ、つま先が向いた方角から花婿が来ると考えました。

二つ目は、通りすがりの人に名前を尋ねる占いです。夜道で最初に出会った男性に名前を聞き、それが未来の夫の名前になるとされました。

三つ目は、ろうの占いです。溶かしたろうを水に落とし、固まった形や壁に映る影から未来を読みました。ドイツの「鉛占い」とよく似た方法です。

四つ目は、鏡の占いです。暗い部屋で2枚の鏡を向かい合わせ、ろうそくの光で奥へ続く鏡の通路をのぞき込みます。そこに花婿の姿が現れるのを待つというもので、少し怖い占いとして語られてきました。

このほか、器に娘たちの指輪を入れて布をかぶせ、歌を歌いながら一つずつ取り出す「器の歌」という占いもありました。取り出したときに歌われていた歌の内容で、その指輪の持ち主の運命を占います。

文学に描かれた占い

スビャートキの占いは、19世紀のロシア文学にも描かれています。

詩人ジュコーフスキーのバラード『スヴェトラーナ』(1813年発表)は、神現祭の夕べに娘たちが靴を門の外へ投げて占う場面から始まります。

プーシキンの韻文小説『エヴゲーニイ・オネーギン』の第5章では、ヒロインのタチヤーナがスビャートキに占いをします。水に落としたろうを見つめたり、器の歌の占いで指輪を引いたり、鏡を月に向けたりします。さらに、夜道で出会った男に名前を尋ねると、「アガフォン」という答えが返ってきます。この章の冒頭には、『スヴェトラーナ』の一節が引用されています。

こうした作品を通して、スビャートキの占いはロシアの人々にとってなじみ深い冬の風物詩になりました。

よくある誤解・豆知識

スビャートキの占いは「ロシア正教の儀式」と思われることがありますが、実際には教会が認めてこなかった民間の習わしです。キリスト教以前の古い信仰と、冬の祝祭が結びついて伝わってきたと考えられています。

参考文献

  • W. F. Ryan, “The Bathhouse at Midnight: An Historical Survey of Magic and Divination in Russia” (Pennsylvania State University Press, 1999)
  • Linda J. Ivanits, “Russian Folk Belief” (M. E. Sharpe, 1989)
  • プーシキン『オネーギン』池田健太郎訳(岩波文庫、2006年改版)
  • Wikipedia(ロシア語版)「Святки」 https://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%A1%D0%B2%D1%8F%D1%82%D0%BA%D0%B8

最終更新:2026-10-08

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