世界じょうしき図鑑

ローマの鳥占い鳥の飛び方で神意を問う

空を飛ぶ鳥の種類や数、方向、鳴き声から神々の意思を読み取った古代ローマの公式の占い。「就任(inauguration)」や「縁起がよい(auspicious)」という英語の語源にもなっています。

発祥:古代ローマ(イタリア)紀元前8世紀ごろの伝承〜偶然のしるしを読む解説のみ

概要

古代ローマには、鳥の動きなどから神々の意思をうかがう、国の公式な儀式がありました。これを日本語では「鳥占い」と呼ぶことが多いです。

ただし、ふつうの「占い」とは少し目的が違いました。ブリタニカ百科事典は、ローマの鳥占いの役目は「未来を言い当てること」ではなく、「これからしようとしている行動を神々が認めているかどうかを確かめること」だったと説明しています。戦争を始める、選挙を開く、役人が仕事に就くといった場面で、「神々はこれに賛成か」を問うための手続きだったのです。

アウグルとアウスピキウム

この占いには、似た二つの言葉が出てきます。区別しておくと理解しやすくなります。

「アウグル(augur)」は、しるしを読み解く専門家の役職です。日本語では「鳥卜官(ちょうぼくかん)」とも訳されます。アウグルは「神官団(コレギウム)」という集団をつくり、一生その地位にありました。人数は時代によって変わり、紀元前300年のオグルニウス法で9人に増やされたと伝わります。のちにスッラやカエサルの時代にさらに増えました。

「アウスピキウム(auspicium)」は、しるしを観察する行為そのもの、またはその権利を指します。語源は「鳥(avis)」と「見る(specere)」で、もともと「鳥を見ること」という意味です。ローマでは、国の役職に就いた政務官(執政官など)が、自分の仕事についてアウスピキウムを行う権利を持っていました。アウグルは、その手順が正しいかどうかを判断する専門家として、儀式を助け、解釈を示しました。

由来と歴史

ローマの歴史家リウィウスが伝える建国伝説では、双子のロムルスとレムスが、新しい町をどちらが治めるかを鳥のしるしで決めようとしました。レムスはアウェンティヌスの丘で先に6羽のハゲワシを見ましたが、ロムルスはパラティヌスの丘で12羽を見たとされます。どちらが勝ちかで争いになり、最後にロムルスが町を築いたという話です。これは伝説で、史実として確かめられるものではありません。

鳥の動きを神々のしるしとして読む占いは、ローマより古くメソポタミアにもあり、古代の中国の書物にも鳥を前兆とみなす話が残っています。

アウグルの神官団がいつできたのかも、はっきりとはわかっていません。古代の人々は、ロムルスや2代目の王ヌマが始めたと考えていました。神官団は帝政期にも続き、4世紀まで存在したことが確かめられています。

仕組み・やり方

アウグルは、先の曲がった杖「リトゥウス」を使って、空や地面に観察のための区画を定めました。この区画を「テンプルム」と呼びます。英語の temple(神殿)のもとになった言葉です。

しるしには大きく2種類ありました。一つは、こちらから求めて観察するしるしです。もう一つは、思いがけず現れるしるしです。観察の対象は鳥だけではありません。雷や稲妻、動物の動きなども含まれました。鳥については、種類、数、飛ぶ方向、鳴き声などが見られました。

戦場では、聖なるニワトリにえさを与え、勢いよく食べれば吉とする方法も使われました。紀元前249年、指揮官プブリウス・クラウディウス・プルケルは、えさを食べないニワトリを「食べないなら飲ませろ」と海に投げ込み、その後の海戦で大敗したと伝えられます。

文化の中での位置づけ

アウグルは政治的にも大きな力を持っていました。しるしが悪いと判断されれば、民会(市民の集会)などを別の日に延期させることができたからです。そのため、鳥占いは政治の駆け引きに使われることもありました。

鳥占いの言葉は英語にも残っています。「就任式」を表す inauguration は、鳥占いで神々の承認を得て就任させることに由来します。「縁起のよい」を表す auspicious は、アウスピキウムから生まれた言葉です。

よくある誤解・豆知識

「アウグルは未来を予言する人」と思われがちですが、上で見たように、主な役目は神々の賛否を確かめることでした。また、動物の内臓を調べる占いは、エトルリアに由来する「ハルスペクス」という別の専門家の仕事でした。さらに古い例として、メソポタミアの「肝臓占い」もあります。

参考文献

最終更新:2026-10-08

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