ドービー・ガートムンバイの屋外の大洗濯場
インドで洗濯を仕事にする人々「ドービー」が、石に布を打ちつけて洗う屋外の洗濯場。ムンバイのマハーラクシュミーのものは、イギリスの統治時代から続き、今もホテルや家庭の洗濯物を洗っています。歴史と洗い方、今の変化を紹介します。
インド・ムンバイ(マハーラクシュミー)1880〜90年代〜洗濯今も続いている
概要
ドービー・ガートは、インドで洗濯を仕事にする人々「ドービー」が、衣類を洗う屋外の洗濯場です。「ガート」は、水辺に下りる石段や岸辺を指す言葉です。昔から、ドービーは川や池のほとりで、布を石に打ちつけて洗ってきました。
よく知られているのが、ムンバイのマハーラクシュミー駅のそばにある洗濯場です。コンクリートで仕切った洗い場が何列も並び、それぞれに布を打ちつける平たい石が据えられています。周りには、洗い上がった布を干すロープが張りめぐらされています。
歴史
インドでは、洗濯の仕事は長く、生まれによって受け継がれる職業の集団(カースト)と結びついてきました。「ドービー」は、洗濯を家の仕事としてきた人々を指す呼び名としても使われます。
マハーラクシュミーの洗濯場は、イギリスの統治時代に作られました。1880年代とする記事も、1890年とする資料もあります。当時のボンベイ(今のムンバイ)で暮らすイギリス人やパールシーの人々の衣類を洗うためだったといわれます。
洗い場は「石」と呼ばれ、ドービーが市に使用料を払って借りています。2012年の報道では、石は731あり、一つの石の使用料は月300ルピーでした。何十年も同じ家族が石を受け継いでいることが多く、親の代から洗濯場で暮らしてきた人もいると伝えられています。
やり方と道具
洗濯物は、ホテルや仕出し屋、病院、家庭などから集められます。まず、持ち主ごとに仕分け、服の目立たない所に、黒い消えにくいインクで家ごとの印や符号を書きこみます。この印のおかげで、大量の服の中から、持ち主の服を間違えずに返すことができます。
洗うときは、服を石けん水に浸してから、両手で振り上げ、洗い場の石に打ちつけます。汚れの多いものは、金属のドラム缶に入れ、薪をたく炉で湯を沸かして煮ることもあります。洗い上がった布は、何列ものロープに隙間なく干されます。洗濯場の干し場でロープを持つ人々は、「ラッシーホルダー(ロープを持つ人)」と呼ばれてきました。
乾いた服は、印を見て仕分け直し、アイロンをかけて持ち主に返します。アイロンは、昔は炭火を入れるものでしたが、今は電気のアイロンが使われています。
仕事は夜明けから夜遅くまで続きます。2012年の報道では、洗濯場で暮らしを立てる人は1万人をこえるとされていました。1日に洗われる服は10万点をこえるともいわれます。ドービーたちの協同組合は、洗濯場全体の1年の売り上げを、およそ10億ルピーと見積もっています。
今の暮らしの中で
洗い方も少しずつ変わってきました。黒い石けんは粉の洗剤にかわり、大きな洗濯機や乾燥機を買って使うドービーも増えています。その一方で、手で洗う仕事も続いています。洗濯場のそばに、鉄道や運動クラブの洗濯物を引き受ける機械の洗濯工場を開いた元ドービーもいます。洗濯場そのものも、2010年から改修の工事が進められてきました。
洗濯場のまわりでは、再開発が進んでいます。2026年8月には、洗濯物の干し場が再開発の計画に含まれた経緯について、ボンベイ高等裁判所が市などに説明を求めたと報じられました。申し立てた人々は、この干し場が1851年から洗濯物を干す場所として使われてきたと主張しています。
マハーラクシュミーの洗濯場は、ムンバイを訪れる人の見学先としても知られています。駅のそばの橋から見下ろすと、白い布や色とりどりの布が並ぶ様子を一望できます。
よくある誤解・豆知識
ドービー・ガートはムンバイだけのものではありません。 洗濯人が集まって洗う場所は、インドの各地の町にあり、どれも「ドービー・ガート」と呼ばれます。
印は家ごとの「名札」です。 ドービーが服に書きこむ印は、ドービーごと、家ごとに決まっています。洗っても落ちにくいインクで書かれます。
映画の題名にもなりました。 2011年には、この洗濯場の名前を題にしたインド映画『Dhobi Ghat』が公開されました。
参考文献
- Rebecca Bundhun「Dhobi tradition far from washed up」The National、2012年12月15日 https://www.thenationalnews.com/business/dhobi-tradition-far-from-washed-up-1.381299
- Free Press Journal「‘Valuable Municipal Land Cannot Be Diverted Without Due Process’: Bombay HC Questions Mahalaxmi Dhobighat Redevelopment」2026年8月20日 https://www.freepressjournal.in/mumbai/valuable-municipal-land-cannot-be-diverted-without-due-process-bombay-hc-questions-mahalaxmi-dhobighat-redevelopment
- Culture Trip「Behind the Scenes at Mumbai’s 140-Year-Old Dhobi Ghat」 https://theculturetrip.com/articles/awash-with-color-a-visual-tour-of-mumbais-dhobi-ghat
- Lonely Planet「Mahalaxmi Dhobi Ghat」 https://www.lonelyplanet.com/india/mumbai-bombay/attractions/mahalaxmi-dhobi-ghat/a/poi-sig/1284817/356405
- Wikipedia「Dhobi ghat」 https://en.wikipedia.org/wiki/Dhobi_ghat
- Wikipedia「Dhobi Ghat (Mumbai)」 https://en.wikipedia.org/wiki/Dhobi_Ghat_(Mumbai)
最終更新:2026-10-17
このページは、世界のそうじと洗濯の習わしを、歴史と文化として紹介するものです。昔の洗い方には、今では危ないとされる材料を使ったものもあります。まねをするときは、洗剤や道具の表示に従ってください。