世界じょうしき図鑑

ハーフェズ占い詩集を開いて答えを得る

願いごとを心に浮かべて14世紀の詩人ハーフェズの詩集を開き、目にとまった詩をお告げとして読むイランの占い。冬至の夜「ヤルダー」や新年「ノウルーズ」に家族で楽しまれます。

発祥:イラン(ペルシア)14世紀以降カード等を引く解説のみ

概要

ハーフェズ占いは、ペルシア語で「ファーレ・ハーフェズ」と呼ばれます。「ファール」は、前兆やお告げを意味する言葉です。願いごとや迷っていることを心に浮かべ、詩人ハーフェズの詩集を開きます。そこで目にとまった詩を、問いへの答えとして読み解きます。

本を開いて偶然出た一節で占う方法は、「書物占い」と呼ばれます。ハーフェズ占いはその代表例で、今もイランの家庭で親しまれています。

ハーフェズという詩人

ハーフェズは、14世紀にイラン南部の町シーラーズで活躍した詩人です。生まれた年ははっきりせず、1320年代ごろとされます。亡くなったのは1390年ごろです。「ハーフェズ」は本名ではなく、コーランを暗記した人を意味する呼び名です。

彼の詩の多くは、「ガザル」と呼ばれる短い抒情詩です。恋や酒、神への思いが、たくさんの比喩を使って歌われています。作品は没後に『ディーワーン(詩集)』としてまとめられました。権威ある校訂本には、約500のガザルが収められています。

ハーフェズは「不可思議な舌」「見えない世界の舌」といった異名でも知られます。人の知らない真理を語る詩人だ、という尊敬がこめられた呼び名です。この評判が、詩集で占う習慣と結びついていきました。

由来と歴史

ハーフェズの詩集で占う習慣は、中世から続いてきたとされます。ただ、いつ誰が始めたのかを示す確かな記録は見つかっていません。

よく語られるのが、ハーフェズの葬儀にまつわる話です。自由な詩を嫌う人たちが、イスラームの作法で葬ることに反対しました。そこで詩集から一節を選んで決めることになり、出てきた詩が埋葬を認める内容だった、というものです。これは後世の伝承で、史実として確かめられたものではありません。

やり方

一般的なやり方は、次のとおりです。

  1. 静かな気持ちで、問いや願いを心に思い浮かべます。問いは声に出さないことが多いようです。
  2. 家庭によっては、ハーフェズに呼びかける短い決まり文句を唱えます。
  3. 詩集を適当なところで開き、そのページの詩を読みます。
  4. 詩の内容を、自分の問いに当てはめて解釈します。

ハーフェズの詩は、一つの言葉がいくつもの意味に読めることで有名です。恋の詩が、神への祈りにも読めます。そのため、読む人の状況によって受け取り方が変わります。家族で集まったときは、年長者や詩に詳しい人が読み上げ、意味を説明することもあります。

伝播・現代

一年でいちばん夜が長い冬至の夜「シャベ・ヤルダー」には、家族が年長者の家に集まります。ザクロやスイカなどの赤い果物を食べ、詩を読み、ハーフェズ占いをするのが習わしです。ヤルダーの祝いは2022年、イランとアフガニスタンの共同提案で、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。春分に始まる新年「ノウルーズ」にも、ハーフェズの詩はよく読まれます。

シーラーズにあるハーフェズの墓所「ハーフェズィーイェ」には、今も多くの人が訪れます。周辺や街角では「ファールギール」と呼ばれる占い屋さんがいます。インコなどの小鳥が、詩の入った封筒をくちばしで一枚選んでくれるのです。イランでは10月12日ごろが「ハーフェズの日」とされています。

一方で、宗教者の中には、こうした占いはイスラームの教えに合わないと批判する人もいます。それでも、詩を楽しむ文化として広く続いています。

よくある誤解・豆知識

ハーフェズ自身が占い師だったわけではありません。占いに使われるのは、あくまで彼の詩です。また、出た詩は決まった運命の宣告というより、考えるきっかけとして受け止められることが多いようです。

ハーフェズの詩は西洋にも影響を与えました。ドイツの文豪ゲーテは、ハーフェズの詩集に深く感動して『西東詩集』を書いたことで知られています。日本語では、黒柳恒男による全訳を読むことができます。

参考文献

最終更新:2026-10-08

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