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つげ櫛つげぐしツゲの木で作る日本の櫛

ツゲの木を削って作る日本の櫛。『万葉集』にも詠まれ、江戸時代には大阪の和泉や鹿児島の薩摩が産地として知られました。櫛の長い歴史と俗信、作り方、今の産地を紹介します。

日本・鹿児島県指宿市、大阪府貝塚市など奈良時代〜(産地の発達は江戸時代)髪今も続いている

概要

つげ櫛は、ツゲ(黄楊)の木を削って作る櫛です。ツゲの材は黄色みを帯び、きめが細かく硬いため、櫛のほか印鑑や将棋の駒にも使われてきました。

日本では奈良時代の『万葉集』に「黄楊の小櫛」が詠まれています。江戸時代には、大阪の和泉や鹿児島の薩摩がつげ櫛の産地として知られるようになりました。今も職人が1本ずつ歯を挽いて作り、髪をとかす道具として使われています。

歴史

縄文時代からの櫛

日本の櫛の歴史は縄文時代にさかのぼります。福井県の鳥浜貝塚では、約6000年前の地層から、赤い漆を塗った木の櫛が見つかりました。ヤブツバキの板から削り出したもので、9本の歯があります。古墳時代の人物埴輪にも、髷に櫛を挿した女性の姿が見られます。

『古事記』や『日本書紀』には、イザナキが櫛の歯を折って火をともす場面があります。この頃の櫛は、竹ひごを束ねた縦長の櫛だったと考えられています。

『万葉集』の「黄楊の小櫛」

『万葉集』巻9には、播磨の娘子(おとめ)が、都へ帰る人を思って詠んだ歌があります。あなたがいないのに、櫛の箱にある黄楊の小櫛を手に取ろうとも思わない、という内容です。平安時代には、唐の影響で横長の櫛が広まり、象牙なども使われました。

江戸時代の産地

江戸時代には髪を結い上げる髪型が発達し、櫛は道具としても髪飾りとしても大きく広がりました。

今の大阪府貝塚市や岸和田市で作られる「和泉櫛」は、江戸時代に日本最大のつげ櫛の産地になったとされます。始まりは飛鳥時代で、二色の浜に流れ着いた外国人が、里の人に作り方を教えたと伝わります。

鹿児島県の「薩摩つげ櫛」は、江戸時代の中ごろに、下級の藩士の内職として広まったとされます。1753年に薩摩藩が木曽川・長良川・揖斐川の治水工事(宝暦治水)を命じられ、重い負担を負ったとき、藩士が内職に櫛作りを覚えたのが始まりという話が地元に伝わります。

作り方・使い方

大阪府が紹介する和泉櫛の作り方は、おおまかに次のとおりです。

  1. 原木を櫛の大きさに挽き割る
  2. 10日以上かけて乾かし、燻す
  3. 鉋(かんな)で削る
  4. のこぎりで歯を挽き、やすりで歯を整える
  5. 外側の歯や峰を削って形を整える
  6. 磨いて、椿油で仕上げる

材料には、輸入された「シャムつげ」と、高級品には薩摩つげが使われます。薩摩つげ櫛は、3年以上自然に乾かした材を使い、椿油を何度もすり込んで仕上げるとされます。ツゲは育つのが遅く、櫛に使える太さになるまで数十年かかるといわれます。

櫛には、髪のもつれをほどく歯の粗い「とき櫛」や、歯の細かい「すき櫛」などの種類があり、用途で使い分けます。使い手が椿油を少しずつしみこませながら、1本を長く使い続けることも、つげ櫛の特徴です。

今の暮らしの中で

薩摩つげ櫛は鹿児島県の伝統的工芸品で、指宿市と薩摩川内市で作られています。和泉櫛は1987年に大阪府知事指定の伝統工芸品になりました。京都の四条通などにも、つげ櫛を扱う古い店があります。

指宿では、女の子が生まれるとツゲの木を植え、嫁ぐときにつげ櫛を花嫁道具として持たせる習わしがあったといいます。ツゲは、指宿市の市の木の一つにもなっています。

京都の安井金比羅宮では、毎年9月に、使い終えた櫛やかんざしを供養する「櫛まつり」が開かれています。櫛を大切な道具として扱ってきた気持ちが、今も行事の形で受け継がれています。

よくある誤解・豆知識

「シャムつげ」は、本来のツゲとは別の木とされます。 名前に「つげ」と付きますが、東南アジアから輸入される別の種類の木です。国産のツゲは、鹿児島県や東京都の御蔵島が主な産地とされてきました。

「くし」の語呂合わせ。 「くし」が「苦」「死」に通じるとして、櫛を拾うことを嫌う俗信があります。一方で、櫛は大切な贈り物でもありました。平安時代には、伊勢の斎宮となる皇女に、天皇が別れの櫛を授ける儀式がありました。

「つげ」と「告げ」。 道で聞こえた人の言葉で占う「辻占(つじうら)」では、「つげ」に「告げ」を掛けて、黄楊の櫛を用いたと説明されます。

参考文献

最終更新:2026-10-11

このページは、世界の装いと美容の品を、歴史と文化として紹介するものです。医療上の効果や、美容上の効果を保証するものではありません。肌に合わないときは使用をやめ、気になることは医師や薬剤師に相談してください。民族や信仰にかかわる装いは、その意味を尊重して紹介しています。

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